義足(仮義足)のリハビリテーションに入院が必要な理由

義足のリハビリテーションにおける、入院リハビリテーションの目的は以下の3つです。

  1. それぞれの患者さんにおける目標とする移動能力を獲得すること
  2. 断端の成熟を十分に促すこと
  3. 義足や断端の自己管理が可能になること

これらの観点から義足(仮義足)のリハビリテーションは基本的にリハ病院やリハセンターに入院して行うことが望ましいです。

 

1について。交通事故などの外傷で切断となった患者さんもいれば、糖尿病などの病気をきっかけに切断になった患者さんなど原因は様々です。

最近は外傷による患者さんよりも糖尿病をきっかけとして切断になった患者さんの方が圧倒的に多いです。病気が原因で切断となった患者さんは切断前からそもそもほとんど動けていなかった方も多いです。

そういった方に義足を作ったからといって、切断前よりもよく動けるようになるということは現実的になかなか難しいです。超低活動な方に高活動者向けのリハビリテーションを行ってはいけません。一人一人の患者さんが義足を装着することでどの程度まで動けるようになるか予測するのはリハビリテーションの目標を立てる上でとても大切です。

 

2について。意外と多くの医療関係者に知られていないのですが、切断術後の断端は徐々に大きさが小さくなっていきます。これを断端の成熟と呼びます。

断端の成熟が進む前に最初の義足(仮義足)を作ってしまうと、すぐに足に合わなくなってしまい義足を履けなくなります。義足は靴よりももっとデリケートで、安定して歩くためには断端と義足のフィッティングが非常に重要です。靴のようにちょっと合わなくてもなんとかなるというわけにはいきません。特に切断後初期の頃には。

2本目以降の義足(本義足と呼びます)は仮義足を作ってから半年から1年くらい経たないと都道府県から支給の許可が下りません。仮義足はいったん作ってしまうと制度上大幅な修正ができないため、断端をある程度成熟させてから仮義足を完成させる必要があるということになります。

これらの理由から切断してすぐ、例えば1ヶ月くらいで急性期病院にいるうちに仮義足を完成させてしまうのはオススメできません。義足のリハビリテーションを進めながら、切断後3〜4ヶ月くらいで仮義足完成に持っていくくらいが理想だと思います。

 

3について。これは断端に傷ができていないか自分でチェックすること、義足のフィッティングを断端袋で自分で調節できるようになること、シリコーンライナーを清潔に保つために自分で洗って干してといった管理ができるようになることなどです。

断端や義足を自己管理できるようになるためには、理学療法士と看護師による指導が重要です。

 

上に挙げた3つのうち、超低活動者で

  1. それほど高い目標が立てられない(たくさん歩くことを目標にできない)
  2. そのため断端の成熟もあまり期待できない
  3. 義足や断端の自己管理は家族が助けてくれるのでなんとかなる

といった条件を満たす人においては、外来や急性期病院にいる間に義足を作ってしまっても良い場合があります。

 

残念ながら現状を見てみると、充実した義足のリハビリテーションを提供できる病院は少ないです。

脳卒中などに比べると患者さんの数が少なく、そのため義足のリハビリテーションの経験を蓄積できる機会が少ないこと、義足のリハビリテーションにおいては義肢装具士との連携が重要ですが、それが十分構築できていないことなどが原因です。

都内近郊の患者さんであれば僕が勤務している病院に来て頂くことである程度なんとかなりますが、遠方の方にとっては近くの病院で適切な義足と義足のリハビリテーションを提供してもらえることが理想です。

 義足を必要とする全国津々浦々の切断者に、義足とリハビリテーションを届けられるよう、標準化した義足のリハビリテーションプログラムを確立することが僕のテーマの一つです。