骨盤半截(はんせつ)なのか骨盤半裁(はんさい)なのか?

どちらも股関節離断です。

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義肢装具のチェックポイント 第8版

右の図を狭義の股関節離断と呼びます。

では左の図は正確には何と呼ぶのか?

 

調べてみました。
まあ、色々な呼び方があります。

整形外科用語集、リハ医学会用語集、義肢装具学会用語集からまとめてみました。

 

英語

  • hemipelvectomy
  • hindquarter amputation
  • △ transiliac amputation
  • △ transpelvic amputation


日本語

  • 骨盤半截(はんせつ)
  • 片側骨盤離断
  • 片側骨盤切除
  • 片側骨盤切断


Webを見てみると、

骨盤半裁(はんさい)を使っている論文もあるようで、

半裁(はんさい)もありなようですし、どの言葉が正しいか断定できません。


少なくとも整形外科とリハビリテーションと義肢装具学会公認の用語集は情報源として確かですので、

骨盤半截(はんせつ)

を使うのが一番問題ないのではないかと思います。これからはこの用語に統一していきます。

両肩離断の筋電義手


Amputee Makes History with APL’s Modular Prosthetic Limb

ジョンズ・ホプキンス大学から。両肩離断者用筋電義手の動画です。

TMR(targeted muscle reinnervation)という神経を移行する手術を行って、筋電義手の操作性を高めています。

両肩離断者の義手こそ筋電義手でないと様々な問題を解決できません。

それにしてもこれ、肩関節、肘関節、手関節、手指がそれぞれ動くという、ものすごく高機能な電動義手です。

日本でここまでのものを開発しているグループはないはずです。

義足(仮義足)のリハビリテーションに入院が必要な理由

義足のリハビリテーションにおける、入院リハビリテーションの目的は以下の3つです。

  1. それぞれの患者さんにおける目標とする移動能力を獲得すること
  2. 断端の成熟を十分に促すこと
  3. 義足や断端の自己管理が可能になること

これらの観点から義足(仮義足)のリハビリテーションは基本的にリハ病院やリハセンターに入院して行うことが望ましいです。

 

1について。交通事故などの外傷で切断となった患者さんもいれば、糖尿病などの病気をきっかけに切断になった患者さんなど原因は様々です。

最近は外傷による患者さんよりも糖尿病をきっかけとして切断になった患者さんの方が圧倒的に多いです。病気が原因で切断となった患者さんは切断前からそもそもほとんど動けていなかった方も多いです。

そういった方に義足を作ったからといって、切断前よりもよく動けるようになるということは現実的になかなか難しいです。超低活動な方に高活動者向けのリハビリテーションを行ってはいけません。一人一人の患者さんが義足を装着することでどの程度まで動けるようになるか予測するのはリハビリテーションの目標を立てる上でとても大切です。

 

2について。意外と多くの医療関係者に知られていないのですが、切断術後の断端は徐々に大きさが小さくなっていきます。これを断端の成熟と呼びます。

断端の成熟が進む前に最初の義足(仮義足)を作ってしまうと、すぐに足に合わなくなってしまい義足を履けなくなります。義足は靴よりももっとデリケートで、安定して歩くためには断端と義足のフィッティングが非常に重要です。靴のようにちょっと合わなくてもなんとかなるというわけにはいきません。特に切断後初期の頃には。

2本目以降の義足(本義足と呼びます)は仮義足を作ってから半年から1年くらい経たないと都道府県から支給の許可が下りません。仮義足はいったん作ってしまうと制度上大幅な修正ができないため、断端をある程度成熟させてから仮義足を完成させる必要があるということになります。

これらの理由から切断してすぐ、例えば1ヶ月くらいで急性期病院にいるうちに仮義足を完成させてしまうのはオススメできません。義足のリハビリテーションを進めながら、切断後3〜4ヶ月くらいで仮義足完成に持っていくくらいが理想だと思います。

 

3について。これは断端に傷ができていないか自分でチェックすること、義足のフィッティングを断端袋で自分で調節できるようになること、シリコーンライナーを清潔に保つために自分で洗って干してといった管理ができるようになることなどです。

断端や義足を自己管理できるようになるためには、理学療法士と看護師による指導が重要です。

 

上に挙げた3つのうち、超低活動者で

  1. それほど高い目標が立てられない(たくさん歩くことを目標にできない)
  2. そのため断端の成熟もあまり期待できない
  3. 義足や断端の自己管理は家族が助けてくれるのでなんとかなる

といった条件を満たす人においては、外来や急性期病院にいる間に義足を作ってしまっても良い場合があります。

 

残念ながら現状を見てみると、充実した義足のリハビリテーションを提供できる病院は少ないです。

脳卒中などに比べると患者さんの数が少なく、そのため義足のリハビリテーションの経験を蓄積できる機会が少ないこと、義足のリハビリテーションにおいては義肢装具士との連携が重要ですが、それが十分構築できていないことなどが原因です。

都内近郊の患者さんであれば僕が勤務している病院に来て頂くことである程度なんとかなりますが、遠方の方にとっては近くの病院で適切な義足と義足のリハビリテーションを提供してもらえることが理想です。

 義足を必要とする全国津々浦々の切断者に、義足とリハビリテーションを届けられるよう、標準化した義足のリハビリテーションプログラムを確立することが僕のテーマの一つです。

義足や義手における支給制度の問題

義足や義手を処方する立場になると、しばしば直面するのは補装具の支給制度の問題です。

 

義足や義手のパーツには高額なものがあります。例えば義足のコンピュータ膝継手や筋電義手などです。

代表的なコンピュータ膝継手にオットーボック社のC-Legというものがあり、これは意図しない瞬間に膝折れして転倒してしまうリスクを、大幅に軽減してくれる優れた膝継手です。全ての人にとってベストの選択肢とは言えないですが、多くの大腿切断者にとっては安心して生活を送れるようになる義足のパーツだと思います。

しかしこのC-Leg、価格が高いことが難点で、膝パーツだけで200万円ちょっと、大腿義足一本となると300万円近くしてしまいます。

筋電義手の場合、前腕切断者用の筋電義手なら生活や仕事の面で多くのユーザーの生活の質を高める完成度の高い補装具なため、広く普及が望まれます。

しかし、やはり価格が高く、本体だけで約150万円、製作費込みで義手1本となると色々込み込みで200万円くらいです。

 

なぜお金の問題が出てくるかというと、例えば東京都の場合、本義足は都の身体障害者福祉センターに行って判定を受け、支給してもらうパーツを決めてもらってから、区市町村に金額を補助してもらうという流れになっているからです。支給の可否を判断する主体は東京都や区市町村なのです。

東京都が義足や義手で高額パーツを支給できない理由はだいたい以下の通りです。

限られた福祉の財源の中で義足や義手の補助を行わなければならない。この財源は義足や義手を必要とする人以外にも脳卒中の装具や、車椅子などなど補装具を必要とする多くの人と分け合う形になる。そのため高額なパーツは、それがどうしてもないと生活できない人以外には支給できない。

たしかにコンピュータ制御の膝継手ではなく、古くからある機械式の膝継手でもリハビリを行えば歩けるようにはなります。最低限歩けるようになるための義足にはお金を出すけれども、より良く歩けるようになるための義足にまではお金は出せません、というスタンスのようです。

義足や義手のパーツは厚生労働省が認可したものから使うという原則があります。ややこしいのはC-Legや筋電義手厚生労働省に認可されたパーツだということです。認可されたパーツから選んでいるのに、公にはされていない、自治体独自の基準や懐事情で支給されたりされなかったりということが起こっているのです。東京都はC-Legを出してくれないけど、新潟県では手帳でもC-Legが出たという話もあったり。

 

厚生労働省はもう少し高額パーツの支給の基準をはっきりさせた方が良いと思います。現場は混乱しています。自治体レベルではなく、国レベルで統一した基準を作ってもらえると助かります。

 

筋電義手を使いこなすためにはリハビリが必要

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*1

いずれの電動・筋電義手においても切断初期においては能動仮義手を用いたリハビリテーションを行うことを推奨する。

義手を使うことに慣れること、補助手としての義手の役割と使用法を学習すること、特に新鮮例では義手を使うことで断端の成熟を進める必要があることなどが理由である。

断端の成熟が進む前に筋電義手を作製してしまうと、すぐにソケットが合わなくなり、筋電義手の操作も行えなくなる。

また、水を使った作業においては筋電義手よりも能動義手の方が良い。用途によっては能動義手を使うことのメリットもある。

*1:前腕能動義手(手先具はハンド)

肩電動義手の現状と課題

肩離断者においては上腕切断者以上に義手の定着率が悪い。

重量や、暑さなど装着時の不快感の影響がより強くなるからである。

そのため、肩離断者においては義手を使わない選択になりやすい。

しかし、両側の肩離断者であれば機能的な義手の必要性は高い。

肩能動義手では体内力源として利用できるのは肩甲骨の可動域と筋力だけであり、これだけでは肘の屈曲とハンドの開閉を同時にかつ十分成り立たせることは困難である。

そのため肘とハンドを電動で動かすことが必要となる。

しかしながら現在厚生労働省に認可されている完成用部品の中に実用的な電動肘は存在しない。

肩電動義手の発展のためには欧米で普及している部品を日本でも使用できるようにすることが一つの課題である。

また、肩離断のような高位切断の場合、筋電位を採取できる部位も限られてくる。そのため筋電義手をより機能的に操作するために、欧米ではTMR(Targeted Muscle Reinnervation)のような外科手術も発展してきている。しかし、日本で行うには解決すべき問題もあり、普及についてはまだ未知数である。

「考えるだけ」で指先まで自由に動かせるロボット義手が開発される

腕を失ってしまった人が「こう動かしたい」と考えるだけで指先まで動かせる義手がジョンズ・ホプキンス大学で開発されているのですが、2014年12月17日に、初めて肩から先がない男性が義手をつけて腕を上

 肩電動義手では上記のようなものが開発されているが、これは米国での研究段階のものであり、日本でここまでの電動義手を作っている研究機関は今のところない。

上腕筋電義手の現状と課題

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当院で現在処方している上腕筋電義手の多くはハイブリッド式である。

これはハンドの開閉を筋電位でコントロールし、肘関節は上腕能動義手と同じ機構、すなわちハーネスを利用した体内力源で操作する。

ハーネスは肘継手の操作と上腕筋電義手を懸垂するために必要となる。

上腕筋電義手は前腕筋電義手に比べて解決すべき課題は多い。

当院における上腕筋電義手の処方後の使用頻度は1週間で平均2.0日、1日2.3時間で、平均中止率は50%であった。

使用中止に至る原因の一つに上腕筋電義手の重量がある。上腕筋電義手は約1.8kgの重量があり、決して軽いとは言えない。

上腕筋電義手では約1.8kgの重量物をハーネスにより操作するため、ハーネスによる頸部や肩部への負担を伴い、使用者は装着時の頸部や肩部の痛みをしばしば訴える。

上腕筋電義手においては、義手そのものの重量や、厚生労働省に認可されている完成用部品の中に実用的な電動肘は存在しないことが解決しなければならない課題である。